始めに
※本記事は、2020年5月6日にnoteに投稿した内容を一部修正して再投稿したものです。
本noteは、私個人の3DCGに対する漠然とした感性を言語化し、今後の制作のための表現研究として記しておくためのもので、3DCG表現を批判する意図で書かれたものではございません。
なお、3DCGを用いた技術展開はゲームやアニメだけでなく、医療現場やシミュレーション、部品の開発等幅広く、全てに言及することは不可能です。よって「3DCG」及び「3D」という単語の意味を「3Dキャラクターを用いたダンス動画や映像作品」に限定しております。
私自身、趣味として3DCGを触る程度の一会社員で、今まで3DCGについて学んでいないため専門性に欠け、至らない点もありますが、あらかじめご了承ください。
また、こうして3DCGの敷地を下げ、はじめるきっかけを身近なものとして下さったのは他でもない開発者やクリエイターの皆様のお陰です。ありがとうございます。
前置きが長くなりましたが、本編も長いです。以上、ご了承ください。
3DCGとの思い出
Tc(てく)と申します。
イラストや漫画、アニメなど楽しく見ています。幼少期より絵を描くのが好きで、社会人になった今でも趣味や仕事で絵を描きます。
最近は3Dモデルを作って映像を作ったり、VR空間でアバターとして用いたりして楽しんでます。
実は昔から、3DCGって「なんか」気持ち悪いので苦手でした。
3Dで作られたキャラクターがぬるぬる動く動画を見て嫌悪感を感じたことがある人は、私以外にもいるのではないでしょうか。
幼い頃、手描きMADやトレス動画と呼ばれる手描きの二次創作動画が好きで、ニコニコ動画やYouTubeでよく見ていました。
その中で、アニメの括りで検索一覧にあがっていたMMD(注1)動画を再生したら、3DCGの独特な表現にゾワッと来てしまうことがありました。
これは私の初投稿作品なのですが、まあ要はこういう感じのテイストです。
他にも、本編は手描きのアニメなのに、エンディングで突然キャラクターが3D化し踊り出したのをみて、えも言えぬ感情に襲われたこともありました。
手描きアニメとは受け取る印象がかなり異なります。
大変失礼だなと思いつつも、3DCGだとわかった瞬間再生を停止したり、チャンネルを変えてしまったりしたことも・・・。
このように3DCGはなんか気持ち悪いので苦手(2度目)です。
でもこの感情は本当に全ての3DCGに該当するのでしょうか?
初見でさほど「うわっ・・・」とならなかったものを、パッと思いつきでいくつか上げました。
・昨今のフルCGのディズニー・ピクサー映画(特に人外キャラクターメイン)
・エンディングのダンスムービーだと、昨今のプリキュア
・MMDも見れる作品は見れる
・ゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ(注2)」の作中MV …etc
他にもあるとは思いますが、ものによっては視聴できるあたり、全てが駄目ではなさそうです。よって、3DCGはきもい、苦手、と一緒くたにして言うのは違う気がします。
ただ、嫌悪感を感じるものに関してはとことん感じるため、見れるものと見れないと思う作品に何らかの線引きがあるようです。
「なんか」の正体は?
「なんか」気持ち悪い、では漠然としていて何がどう気持ち悪いのかよく分からないので、ざっくり2点考えてみました。
・動きが気持ち悪い
・似てないから気持ち悪い
なるほど。
「似てない」に関しては版権元がある場合に限りますが、だいぶ雑な感想となりました。
だいぶ前のものですが、3DCG触りたての頃も同じくモデルの再現度について気になっていたので、アンケートを取ったことがあります。
もし暇でしたらご意見ください
・似せる気がないとまではいかないが製作者の絵柄が強く出ているmmdモデルについて(配布を前提とする)— Tc/テクネチウム (@rb_tc04092my) May 22, 2017
正直、ファンアートや同人イラストが対象だと「可愛ければ公式に忠実でなくてもいい(要約)」がたった6割ってことはないと思ってしまいました・・・
むしろそこ以外のマイナスな言い方をしたつもりの項目が4割はいるという。うーん興味深い。
・・・ていうか、手描きアニメとかファンアートって、自分の絵柄ガンガンだして公式そのものじゃなくても幅広い層から愛されとても楽しく見られるのに、何故3DCGになると「似てるかどうか」という評価観点がでてくるんですかね・・・
個人的に「なんか」には再現度が強く関わってきている気がしますので、今回は前者のアニメーションよりも後者「似てるかどうか」に焦点を当てて考えていきたいと思います。
不気味の谷(現象)
こういった違和感については「不気味の谷」という現象が提唱されており、研究や考察が既に存在しています。気になった人は是非調べてみてください。
すごく腑に落ちたのはニコニコ大百科さんのこちらの記事で
不気味の谷とは (ブキミノタニとは) [単語記事] – ニコニコ大百科「不気味の谷(現象)」(英語: uncanny valley)とは、1970年にロボット工学の分野で提唱された経験則であるdic.nicovideo.jp
要約すると
・低頭身のキャラクターや動物など、デフォルメ要素が強く、非人間的な造形を含むと違和感が少ない【デフォルメ的表現】
・現実と見分けが付かないほどにリアルで忠実だと好印象を抱く【クオリティ】
・中途半端に全体像が似ているが細部が微妙にずれていると、違和感を引き起こすことになる。【キャラクターの再現度】
興味深いですね。自分の感覚に落とし込んで考えてみると・・・
ディズニー・ピクサー映画:
3DCG全体のクオリティーの高さに加え、目の大きさや等身、人外的特徴など、デフォルメや非人間デザインを用いたことで、違和感が軽減しているのでは?
かなり有名な話なんだけど
トイストーリーは世界初の長編アニメCG映画で
当時のCG技術だと人間を違和感無く描くのが
滅茶苦茶に難しかったんですよ
そこで敢えておもちゃが主役のアニメにして
作画的な違和感を減らして
ストーリーも面白い歴史的な名作を作り上げた
ピクサーは本当に天才集団だと思う— ck2cartoon (@ck2cartoon) February 28, 2020
ダンス動画:
元のキャラクターの再現度が高く、またダンス以外の表情や仕草など、細かいところまで作りこんであり、愛情を感じるから嫌悪感を感じないのでは?
(とても好きなのでぜひ見てほしい・・・)
これらのものが絡み合って、違和感になったりならなかったりしていたのかもしれません。
※あくまで私個々人の感性の問題です。
今後の制作にどう落とし込むか
元々3DCGを触り始めた理由は、嫌いだからでした(直球)。
忘れもしない3年前のエイプリールフール、ネタとして一日だけ!とふざけ半分で手を出しました。目も当てられないほど酷かったです。ポリゴンはバキバキ、動かせば関節がひっくり返り地獄絵図、表情が足りず機械的、何度作り直しても顔が似ない。いつも「うわ・・・きも・・・」「似てない・・・」「無理・・・」とだいぶ酷いことを言いながらやってました。完成された映像すらも嫌いだった私にとっては不快のオンパレード。地獄巡りでした。
しかし、漠然と嫌いと感じていたものにあえて突っ込んでいったことで
・「なんか嫌い」じゃなくて、「何がどう嫌い」なのか
・じゃあそれがわかれば、不気味の谷を少しでも越えられるんじゃないか?
・ダンス動画ってなんで3Dモデルばかりなんだと不満に思っていたけど、大人数の場合やカメラワークのことを考えると圧倒的に楽なんだ
など、やってみてはじめて見えてくるものがありました。やらなかったら一生「なんかきもい」から抜け出せなかったかもしれません。
エイプリールフール単発企画のはずが、気づいたら睡眠時間返上で1ヶ月以上毎日続けてました。
なんだかんだ言いながらすごく楽しかったんですよね。不思議ですね。
で、出来上がったのが冒頭にもあげたあれです。
さて、ここからは今後の自分の創作の方向性の模索となります。
クオリティ面に関しては、1人で趣味程度に制作しているため、モデリング(造形)、モーション(動き)、エフェクト(効果や演出)全てにおいてピクサーやその他映像会社並に持っていくことは厳しいです。
となると、自分のやりたいこと(二次創作)と現環境と合わせてできることとしては
【キャラクターの再現度】
ここにかけるべきかと思いました (※デフォルメ化や人外キャラについては今回似せることと外れるのでいったん置いときます、いずれやってみたいとは思っています)。
とはいえただ外見が似ればいいわけでないと思います。例えばですが、
・このキャラクター今すごい人気だなあ。あまり詳しくないけど、設定資料あるし作ろう。
・映像を作りたいけど難しそう、キャラクターデザインの資料を渡して、モデリングや映像制作などの後の工程は外注しよう。
このように、ただ与えられた資料通りにモデルを作ることを目的とした作品からは、キャラクターの性格や込められた思いなどは伝わりづらいです。
結果、そのキャラのことが好きな人に
「似てるんだけど無機質だな・・・」
「私の解釈してるキャラのイメージと違う・・・」
と思わせてしまうかもしれません。
ずっと漠然と思っていた「なんか」の要因の一つにこれが該当しそうです。
ということで、まずはそのキャラクターの性格や内面、込められた思いなど、本編を見まくりキャラクター製作者よりも理解するつもりで、徹底的に分析します。
表情ひとつ取っても、瞬きや笑い顔、口の動き(オーバーか控えめか等)、性格や仕草など、同作品の他のキャラクターとは違った印象や個性を絶対持っているはずです。
顔のパーツなんかも、ちょっとのズレが致命的な違和感になってしまうので、他人に見てもらい意見を求めたり、顔のパーツの位置や大きさをずらしたり、最悪1から作り直したりして、精度を高めていくことが重要かもしれません。(余談ですが、デレステの3Dモデルは、なんかイマイチだな、という声があると次のアップデートでモデルの修正が起こると聞きました。すごい、愛を感じる・・・)
ダンス動画の場合、ダンスがメインのため、キャラクターの表情が疎かになりがちですが、瞬きや笑い目や、リップシンク(口パク)しかなく表情が乏しいと、無機質さが取れないと感じます。
この場面(振り付けや歌詞)のとき、この人はこんな表情をしそうだな・・・等、動画全体でキャラをどう魅せるかをネームに起こし、形にしていきます。
あとは動画全体を、現実のようなリアルな質感(テクスチャやエフェクト)で統一するか、一般的な2Dアニメ調にするか、どんな演出や効果を入れるかといったことも後々必要になります。
しかし、これは自分の目指したい動画の方向性にもよるので、モデルの似てる似てない問題とはまた別のお話。機会があったら前節で触れた動きのことも含めてまた考えてみたいです。
まとめ
3DCGに限らず、全ての創作活動において愛やこだわりは必要です。ただ、3DCGに関してはこの辺の不足が顕著に作中に現れるようです。クオリティは妥協するみたいな言い方もしましたが、愛があればクオリティも勝手についてくると思います。
今できることはとにかく私なりの最大の愛を持って取り組むことに尽きるのでしょう。
細かい作り込みを心がければ、閲覧者にも熱意が伝わると信じています。
最後に、先程のニコニコ大百科さんの記事より印象に残っている一文を引用し、まとめとさせていただきます。
細部の練り込みを造形師の技術と愛でクリアし、良質な生産ラインに乗ったとき、印象はまた一転して上昇傾向となり、不気味の谷を越えることが出来る。
不気味の谷現象突破の道のりは長い・・・
やっていきましょう。
(20251117追記)
2022年ごろのものですが、その後ある程度模索した結果の答えとなるものが作れたのでおいておきます。(腐向けともとれる内容なので苦手な人はお控えください)
【MMDイナイレ】WAA!!!!【風丸&吹雪】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm41269433
【脚注】
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1)MMD
『MikuMikuDance』(みくみくだんす)は、「樋口M」こと樋口優氏が無償公開しているフリーの3DPV作成ツール。MMDと略される。
https://sites.google.com/view/vpvp/
2)アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ
『アイドルマスター シンデレラガールズ』のアイドルが活躍するリズムゲーム。本noteでは以降略して「デレステ」と記載する。

